バス運転手とお客様は一期一会です。
貸切の仕事で何日間も同じお客様とご一緒する仕事をのぞけば、短くて数分、長くても数時間のお付き合いで、お客様との関係性は密ではありません。
そんな短いお付き合いでも、時にお客様から「チップ」を頂くことがあります。
ただそう頻繁にあることではないので、皆さんがバス運転手になってもしばらくはそういう機会がないかもしれません。
しかし長くバス運転手をしていると、印象的な「チップ」を頂けるお客様と出会うものです。
この記事では、僕がバス運転手として働いてきた中で印象に残っている「チップ」を5つご紹介します。
↓筆者の自己紹介
もちろん様々なお客様がご乗車になるので、頂けるものは人それぞれ変わります。
これからバス運転手を目指す方は、どんなお客様との出会いがあるんだろうと思いを馳せながら読んでいただければ幸いです。
ちなみにチップとは、一般的にお客様から頂く心づけ(金銭)だと思いますが、この記事でご紹介する「チップ」はすべて食べ物になります。
お客様からチップ(金銭)をもらえることはあるの??
チップ(金銭)は昔に比べると少なくなっています。僕は日本人のお客様からもらったことはほとんどなく、インバウンド(訪日外国人旅行)のお客様から頂くことはありますが、コロナ禍の現在ではほぼ無いに等しいです。
※ここに記載した内容は特定の会社・団体・組織・個人を指すものではありません。またバス会社や仕事によって状況は異なるので、この記事の内容がすべて当てはまるわけではない事をあらかじめご了承願います。
チップ① 飴玉
飴玉は意外と頂く頻度が高いです。
僕は一般路線、貸切乗務中にお客様から頂きました。
一般路線の時は降車時に「お疲れ様」と言ってそっと渡して頂き、貸切の時は休憩箇所に到着し、僕がトイレに行ってバスに戻ってくると運転席に5個ほどまとめてあったことがありました。
チップ② 缶コーヒー
高速路線や貸切の時、サービスエリア等での休憩中に頂くことが多いのが缶コーヒーです。
サービスエリアに到着してトイレやお土産を買いに行ったお客様が、バスに戻ってきた時に僕の分のコーヒーも買ってきてくれて渡してくれたことが何度かありました。
ただし以前の記事でも書いた通り、僕はコーヒーを飲むとトイレが近くなるので乗務中は飲まないので、家に帰ってからいただきました。
買ってきていただいたものが何であれ僕のことを思ってのものなので、その気持ちだけで心がほっこりした気持ちになりました。
チップ③ チョコレート
チョコレートは高速路線乗務中に頂きました。
バス停に到着後お客様が降車時に、
「お疲れ様です。」
といって渡してくれました。
僕は甘党なので、チョコレートなどの甘い系の「チップ」は非常に嬉しいです。
特に高速路線など長距離を運転した後だとなおさら嬉しく思います。
チップ④ 紙パックのジュース
紙パックのジュースは一般路線を運行中におばあちゃんから頂きました。
田舎の路線でお客様はおばあちゃんだけで、ひたすら僕に話しかけていました。
しかし、その内容が放送禁止用語連発でとてもここでは言えないような事ばかりでした…(笑)
ぼけている様子はなく、とにかく次から次へととてつもない内容のお話をするので僕は運転しながら、
「はい。はい。そうですよね…(汗)」
としか受け答えできませんでした。
そしてとあるバス停で降車の際に、
「はい。これ。」
と言って無造作にバックから紙パックのジュースを取り出し僕に渡してくれました。
「ありがとうございます。」
と会釈をすると、おばあちゃんは無表情でバスから降りていきました。
歩いて行く先を見ると老人ホームが見え、
(ここの入居者のなんだな)
と思いました。
しばらく僕はそのおばあちゃんを見送っていましたが、車内での様子とは打って変わってその後ろ姿が少し寂しそうに感じました。
チップ⑤ 作りたてのお好み焼き
これも一般路線バスを運行中のことです。
夜11時を過ぎていました。
とあるバス停に近づき人影がいないことを確かめ通過しようとすると、前方から女性が運転席側のドアに向かって走ってきたので、慌てて停車しました。
(あれ?バス停に人が立ってた?)
と焦りましたが、よく考えたら乗車するお客様が運転席の窓に向かって走ってくるのはおかしい話です。
(もしかして、通過したから直接クレームを言いに来たのか??)
と思い身構えましたが、
「遅くまでお疲れ様!!良かったらお好み焼き食べて!!熱いから気を付けてね!!」
と袋に入った出来立てのお好み焼きを運転席の窓越しに渡してくれたのです。
僕はてっきりクレームを言われるものだと身構えていたので面食らってしまい、
「あ、あ、ありがとうございます。」
と言いながらありがたく頂きました。
できればできたてあつあつを食べたかったのですが、終点まで我慢して休憩所でおいしくいただきました。
チップ⑥ 袋が開いた食べかけのお菓子
バレンタインデーの2月14日、一般路線乗務中におばさまから頂きました。
「バレンタインまだもらってないでしょ?」
と言いながら降車時に頂きました。
内心では余計なお世話と思いつつ(笑)頂いたものを見ると、有名百貨店の紙袋に包まれた大きめのお菓子だったので、
(これはすごいものを頂いたぞ。)
と嬉しく思い、早く中身を見たくてうずうずしていました。
そして終点に到着し中身を空けてみると、
なんと食べかけのお菓子でした…
食べかけと言っても個包装のお菓子だったのでまだよかったのですが、いくら頂き物とはいえさすがに食べかけのものはちょっと…と思いました(笑)
バレンタインデーのお菓子として渡したんじゃなく、単純に自分が食べておいしくなかったから僕に渡したんじゃないのか?と思ってしまいました(笑)
【まとめ】バス運転手の僕がお客様から頂いた印象的な「チップ」6選
運転手の中には、
「お客様から頂いたものはありがたいんだけど、衛生面が気になるから食べれない。」
という人もいます。
僕はどちらかというとそこまで気にしない性格ですし性善説に基づいているので、お客様から頂いたものはすべて食べていました。
しかしコロナ禍の現在ではお客様から頂いた食べ物は、申し訳ないですが口にすることはありません。
上記で紹介させていただいたものもすべてコロナ前ですし、そもそもコロナ禍になってお客様から頂いたことはまだ1度もありません。
お客様とはそのほとんどが乗降時の一瞬のふれあいの中、何かを頂くととても印象に残りますし、頂いたものが何であれそのお気持ちにとても心が温かくなります。
あなたもバス運転手になれば、心が暖かくなる瞬間がきっとあるはずです。