「やってしまった…」
バス運転手が乗務中にトラブルを引き起こしてしまった時、心の声はだいたいこうなると思います。
大なり小なりトラブルを引き起こすと管理者に怒られ、会社での評価も下がってしまいます。
誰しもトラブルを起こしたくて仕事をしていません。
日々失敗を防ぐために注意しながら仕事をしているはずです。
しかし、注意しているにもかかわらずトラブルは発生してしまいます。
しかもバス運転手に起因するトラブルもさることながら、お客様同士のトラブルなど不可抗力によるものもあります。
バス運転手を続けていると、誰しもが何かしらのトラブルに見舞われます。
そのようなトラブルに上手く対処できないと、不可抗力によるものであったとしても運転手の責任になってしまうこともあります。
結果的にトラブルが発生した時は、
「動揺し」
「不安になり」
「見て見ぬふりをし」
結果的に更に状況が悪化してしまうと最終的に会社に対して「隠ぺい」が頭をよぎるのです。
この記事では、これからバス運転手になろうとしている方や新人バス運転手の方に向けて、
②トラブルに対する考え方
③どのようにトラブルに対処すればいいのか
など僕の経験をもとに詳しく解説していきます。
結論を先に言えば、
「運転手の自己判断で運行を続けると状況が更に悪化することがある。」
「運転手起因のトラブルであれば特に報告遅れや隠ぺいは自らの立場を危うくしてしまう。」
「ミスは必ず糧となるのでミスした後の立ち振る舞いや考え方が重要。」
となります。
バス運転手になりたい男女
乗務中にミスしてトラブルを引き起こしてしまったらどのように対処すればいいの?
roi
ミスしても時間を戻すことはできません。クヨクヨするよりもその後の立ち振る舞いや考え方が重要です。
↓筆者の自己紹介
※ここに記載した内容は特定の会社・団体・組織・個人を指すものではありません。またバス会社や仕事によって状況は異なるので、この記事の内容がすべて当てはまるわけではない事をあらかじめご了承願います。
バス運転手のトラブルとは?
先ほども少しお話しましたがバス運転手のトラブルは、
②バス運転手に起因するトラブル
と大きく分けて2つあります。
つまり、バス運転手のミスによって引き起こされるトラブルとバス運転手に起因しないトラブルに分けられます。
細かく見ていくと、トラブルの種類は多岐にわたりますので、ここでは主なトラブルについてご紹介したいと思います。
不可抗力によるトラブル
お客様同士のトラブル
特に路線バスはお客様同士のトラブルが発生しやすくなります。
見ず知らず同士のお客様が不特定多数乗車される路線バスは、時に非常に気をつかいます。
例えば、
②車内の携帯電話の使用トラブル
③リクライニングシート使用時のトラブル
④コロナ関連のマスク着用トラブル
などなど車内でのお客様同士のトラブルは多岐にわたります。
もちろんバス運転手はバスを運転している為、逐一詳細にバス車内の様子を見ているわけではありません。
そのため防ぎようのないトラブルにはなります。
しかし程度にもよりますが、このようなトラブルが起きた時には見て見ぬふりをして運行継続するのではなく、安全な場所に停車してバス運転手が適切に介入しなければ更に状況が悪化してしまうことがあります。
天災(地震・台風・ゲリラ豪雨等)に起因するトラブル
天災によるトラブルは防ぎようがありません。
お客様の安全最優先に、あらかじめ台風や豪雨による運休を行う場合もありますが、それでも当初想定していたよりも風雨が強くなることもあります。
また地震は予知できるものではなく運行中に突然発生します。
これら天災による影響は、バスの大幅な遅れが発生するだけでなく迂回運行や場合によっては運行継続の可否をも判断しなければなりません。
正しい判断をするためには、適切な箇所から正しい情報を収集しなければなりません。
しかしながら運転手のバス運転手が運転席で得られる情報は限られてきます。
まだ行けると運転手が自己判断して運行を継続してしまうと、状況が更に悪化することも考えられます。
もちろん現場の状況を一番よく見ているのは運転手自身ですが、一人で判断するのではなく安全な場所に停車し、運行管理者に状況説明を行いその後の指示や判断を仰ぐのがお客様の安全を確保する上で重要であると言えるでしょう。
バス運転手に起因するトラブル
早発
バスは停留所を所定の時刻より早く発車してはいけません。
言わずもがな不特定多数のお客様がご利用になるバスは公共交通機関であり、お客様の利便を損なってはいけません。
目的地に行くために、停留所やホームページに掲載している発車時刻を見て該当バスに乗るためにお客様は予定を立てています。
そのバスに乗ろうと思って発車時刻までに停留所に来たのに、すでにそのバスが発車していればバスに対する信頼性や利便性が著しく損なわれてしまうことになります。
そのため早発をしたバス運転手に対してバス会社から指導や処分が行われてしまいます。
考え事などをしてボーっとしていると早発をしてしまうので、運行表に記載されているバス停の通過時刻を確実に確認しながら運行する必要があります。
運行経路間違い
路線バスはあらかじめ決められた経路を運行しています。
しかし時に右折・左折をしなければならない箇所で直進してしまうなど運行経路を間違ってしまうことがあります。
この場合も考え事などボーっとしているときに発生しやすくなりますが、運行中は緊張感をもって慣れた路線であったとしても運行経路を逐次イメージしながら運行しなければなりません。
バス停通過
バス停にお客様が待っているにもかかわらず通過した場合や降車ボタンが押されているにもかかわらず、停車せずにバス停を通過した場合は、バス停通過となってしまいます。
特に夜間であればバス停に立っている人が見えづらかったり、バス停から離れて立っているので乗車しないだろうと思って通過すると、後からバス会社に苦情が来てしまいます。
夜間は特に注意してバス停を確認するとともに、バス停付近に人影が見えたら、必ず停車するクセをつけておけば防ぐことができます。
また降車ボタンが押されているにもかかわらずバス停を通過してしまうケースは、これも考え事をしている時に発生しやすくなるので、バス停を通過する際には確実に、バス停付近の人の動向と降車ボタンの確認を行う動作を行えば防ぐことができます。
初めてのトラブルは焦りショックを受けるもの
特にバス運転手起因のトラブルは焦ると同時にショックを受けます。
入社から順調に仕事をこなし自信が芽生えてきた中で初めてのトラブルであるほどその反動で焦りもショックも大きくなります。
僕が初めてトラブルを起こしたのは入社3年目の時でした。
未経験での入社でしたが、何事もなくバス運転手としてのキャリアを積んでいた中でのトラブルだったので相当なショックを受けました。
3年間ずっと無事に仕事ができていたわけですから、
「僕は失敗などしない。」
と言う変な自信まで持っていたほどでした。
ただでさえ初めてのトラブルはショックを受けるのに、更に追い打ちをかけるのが「事情聴取」です。
この「事情聴取」が精神的にこたえるのです。
トラブルの内容によりますが、基本的には支店又は営業所に帰庫すると一緒にドライブレコーダーをチェックしながらあれこれ事情を聞かれます。
その為会社に帰る時の回送中は、非常に憂鬱な気分になります。
バス運転手の仕事と言うのは、常に監視下に置かれていると言っても過言ではありません。
バス車内・車外にはドライブレコーダーが設置されており、最新のドライブレコーダーはリアルタイムで乗務中の様子がチェックできるようになっています。
事故やトラブルが発生した際は心強い味方になってくれる反面、会社の活用方針によっては「粗さがし」のように使われる場合もあり、バス運転手にとってドライブレコーダーは一長一短であるとも言えます。
このドライブレコーダーの内容は「事情聴取」の際にチェックされ、あなたの一挙手一投足まで見られます。
「あなたの○○ができていないから、結果的にトラブルにつながった。」
「会社で定められている手順を守っていないからこうなった。」
と言う風に、運行管理者から追及されます。
失敗した際になぜそうなったか振り返り、原因を探ることはとても重要です。
しかしドライブレコーダーは仕事中の様子がすべて記録されているので、運行管理者と一緒に見ながら逐一追及されることは精神的に非常につらいです。
どんなに素晴らしい先輩でもトラブルを起こした経験がある。
特に新人の頃はどの先輩も輝いて見えるものです。
自分より仕事の幅が広くバリバリ仕事をこなす先輩は憧れであり、目標とするべき存在でもあります。
そんな中で、自らが失敗してしまうと、
「あの先輩はあんなにすごいのに、自分はこんなことでトラブルを起こしてしまった。」
と考えがちです。
自らと先輩を対比させた時に、その存在の大きさから今まで失敗したことがないように感じ、自らのダメさ加減が際立つように感じてしまうものです。
しかし、先輩も人間です。
過去に必ずトラブルを起こした経験をしています。
僕も初めて失敗した時は同じような思考で、自分のダメさ加減にうんざりしていたのですが、後々先輩達と話をしていると、
こんなすごい先輩でも、意外と過去にトラブルを起こしているものなんだな。
と思うようになりました。
どうしても自分の失敗は他の人に言いたくないので失敗談は聞きづらく、あなたの耳になかなか入ってこないと思います。
しかしどんな先輩でも必ずトラブルを重ね、乗り越えて今があることを忘れないでください。
失敗したのはあなただけではありません。
トラブルを起こした後の気持ちの切り替えが重要。
トラブルを起こした直後は、頭の中でいろいろなことを考えます。
「あの時こうすればよかった。」
「支店・営業所に戻ってからどういう風に説明しようか。」
「かなり怒られるのかな。」
「どんな処分が下されるのかな。」
などなど、後悔、反省、恐怖などの思いが頭の中を駆け巡ります。
しかし、それは【第2の失敗の原因】になります。
つまり失敗が連鎖してしまうということです。
バス運転手の仕事は少し気を抜くとトラブルを引き起こしやすくなります。
例えば先ほども説明しましたが、ボーっと他のことを考えていたために、バス停にいるお客様に気が付かず通過してしまったり、交差点で右折しなければいけないところを直進してしまうことは、比較的よくある事例です。
1つ目のトラブルをクヨクヨ考えていたせいで、余計な2つ目のトラブルを引き起こしてしまっては目も当てられません。
クヨクヨ考えてもいいですが、それは無事に帰庫してからにしましょう。
僕もトラブルを起こしたことがあるので、乗務中に考えてしまう気持ちはよーーーーーーくわかります。
しかし起きてしまったことは仕方ありません。
あなたがまだ乗務途中である場合は、いったん頭の中をリセットし目の前の仕事に集中するようにしましょう。
トラブルの隠ぺいは自らの立場を危うくする。
これまで一度もトラブルなく乗務して自信もついてきた中で初めての失敗をすると、【隠ぺい】が頭をよぎることがあります。
例えば運行経路間違いをした場合、本来であればすぐに運行管理者に報告しその後の対応ついて指示を仰ぎますが、
(このまま自分の判断で本来の経路に復帰してしまえばバレないんじゃないか。)
と考えてしまうこともあると思います。
しかし、どこで誰が見ているか分かりません。
運よくその日は何事もなく帰庫できたとしても、数日後に乗車していたお客様からの問い合わせにより発覚することもあり得ます。
正直にその場で報告していればそこまで大事にならなかったことでも、隠して自己判断で本来の経路に復帰したがために、処分が重くなる可能性もあるのです。
またバス運転手に限らず、働く上でその人に対する『イメージ』と言うのは非常に重要です。
極端な話、
「あの人はトラブルを起こしてもちゃんと報告する人。」
というイメージと、
「あの人は隠ぺいする人。」
と言うイメージでは雲泥の差になります。
乗務員同士でのイメージならまだしも、会社からそのようなイメージやレッテルを張られてしまうと、あなたへの今後の評価に多大なる影響を与えてしまいます。
トラブルが自らをレベルアップさせてくれる。
トラブルを起こさなければ気づかないことがあります。
トラブルを起こして初めて注意すべき点が分かることもあります。
これまで無意識に行っていたことは、実はたまたまうまくいっていただけで、本当はこの部分を注意して運行しなければならなかったんだと、後から気づくことが多々あります。
どの先輩でも過去に必ず失敗した経験を持っているとお話しましたが、今バリバリ働いている先輩こそトラブルを経験したからこそレベルアップし今があるのです。
つまりトラブルを糧にして自らを更に成長させていこうという前向きなマインドが重要なのです。
【まとめ】バス運転手は誰もが乗務中のトラブル経験あり。失敗を反省しすぎるな!その後の対処が重要だ!僕の経験をもとに詳しく解説。
乗務中のトラブルは誰でも経験があるものです。
それは会社も重々承知しています。
人間がバスを運行する以上、トラブルを起こしてしまうことは織り込み済みなのです。
もちろん何事も無いに越したことはありませんし、事前の対策も重要ですが、それ以上にトラブルを起こした後の立ち振る舞いと、それをどのように糧にして今後の仕事に活かすか考えることの方がもっと重要なのです。
この記事を読んでいる中に現在進行形でトラブルを起こしてしまった現役バス運転手の方もいらっしゃるでしょう。
自らの失敗に思い悩んでいるかもしれません。
しかし、前向きにこれを糧に更にレベルアップしてやろう!とマインドを変えることができれば、きっとあなたはバス運転手として更にレベルアップすることができると思います。